迷走する新国立競技場の建設プラン
新国立競技場の建設費用が2,520億円という莫大な金額になることが大きな問題となり、先週ついに首相がこの計画を白紙に戻して見直すことを発表しました。
当初コンペを行ったときの設定予算が1,300億円でしたので、2,520億円というのは2倍近い金額です。しかも、周辺の歩行者デッキの整備費等72億円が含まれていなかったり、本来つけるはずの屋根を先延ばしにしており、後にその分の工事費用が百数十億円かかると言われ、トータルでは3,000億円規模になりそうな状況だったのです。
この見積額になるまでにも金額が二転三転していることや、今後、さらに資材の高騰がおこる可能性や為替レートの影響によっては、完成性してみたら4,000億円でしたってことになっていたかもしれないと思うとぞっとします。
マスコミの世論調査でも、7~8割が反対していて、予算を気にせず突き進もうとするJSCに国民は完全にノーを突きつけている状況となり、ようやく政府が重い腰をあげて見直しを決めてくれました。
走り出したら誰も止められない、責任を持ってストップをかける人がいない、そもそも誰が責任者なのかわからないという酷い状況に陥っていまいたが、なんとかギリギリのところで止まった感じです。見直し案においては、ぜひプロジェクトの責任者を明確にしてきっちりすすめてもらいたいですね。
六本木ヒルズの総事業費と同じ!
さて、今回問題となった新国立競技場の建設費2,520億円ですが、あまりにも額が大きすぎて、高い安いの感覚もわかりづらいので、ここで過去のオリンピックのメイン会場がいくらで造られたのか比較してみましょう。
北京オリンピック(2008年) | 約430億円 |
ロンドンオリンピック(2012年) | 約650億円 |
北京が約430億円、ロンドンが約650億円だそうです。これらと比べると2520億円はまさに桁違いの大きさです。どちらも当時の為替レートによる金額だということなので、仮に今の為替レートで換算したとしても(そういう換算が正しいかどうかは別にして)、北京約550億円、ロンドン約1,000億円くらいになりそうなので、やはり問題の国立競技場は高いなという印象でした。
他の競技場と比べると、ダントツなのでもっと大きな建造物の費用と比べてみましょう。
スカイツリー | 約650億円 |
瀬戸大橋(42橋 約20.8km/トンネル部 4ヶ所) | 約6,400億円 |
阿倍野ハルカス | 約1,300億円 |
六本木ヒルズ | 約2,700億円 |
NHKの新社屋(建設予定) | 約3,400億円 |
スカイツリーが約650億円ですので、それよりも全然高いです。さすがに瀬戸大橋は、この新国立の2倍以上の金額となっていますが、約800m以上の大きな橋6本を含む42本の橋とトンネル4ヵ所を造った費用なので、規模が違います。
ビルでいうと、日本一高いビル、大阪の阿倍野ハルカスが約1,300億円、複数の建物の集合体で一つの街という感じですが六本木ヒルズが約2,700億円です。時代が違うので単純比較はできませんが、つまり今回問題となった新国立競技場は、六本木ヒルズと同じ金額ということになりそうです。
ちなみに、今後、予定されているNHKの新社屋も約3,400億円とかなりの大物みたいですね。
問題の競技場案が高額となった理由
では、最後になりますが、なぜこんなにお金がかかるのかについてふれてみたいと思います。
それは独特のデザインというか独特な構造にあるそうです。新聞記事などでもキールアーチと呼ばれる二本の大きなアーチ構造に金がかかると言われています。
私は建築のことはよくわかりませんが、建築コンサルタントの方の解説によると、この大きなアーチによって競技場の屋根を支えるという構造は、大きな橋のようなものだということです。
通常の競技場であれば、特殊なかたちではありますが、ビルなどの建物と同じように柱があり壁があり上に屋根があるという構造になります。しかし、問題となった新国立競技場は、一般の建物とは違いこのキールアーチというものにより屋根が支えられる構造になっていて、アーチにより橋げたを支える構造のアーチ橋というタイプの橋と同様な構造なのだそうです。
そのため、建物を造るような工事というより大きな橋を造るような工事が必要になってくるそうです。ちなみに、大阪に夢舞大橋という可動式の大きなアーチ橋があり、その総工費は650億円だったそうです。
ここからは素人の解釈なので、専門家の方からは違うよと言われてしまうかもしれませんが、問題となった競技場案は、観客席などの建物部分とアーチと屋根という橋の部分が組み合わされた競技場なので、競技場を一つ造るようにみえて、実は競技場と大きな橋の二つを同時に造るようなイメージといえるのではないでしょうか?
だとすると、競技場の工費が1,000億円で、橋の工費が1,000億円で合わせて2,000億円クラスの工事になるというのは、このデザインであれば当然のことなのかもしれません。
しかし、できあがるのは競技場一つなわけですから、そんな巨額な費用を使うのはどうかと思いますよね。結局はコンペの段階で、設定予算に収まらないデザインを選んでしまった(予算に収まらないことに気がつかなかった)ことが間違いの始まりだったのでしょう。きちんと予算に収まるのかをチェックする機能があれば防げたのかもしれません。
私は、スポーツが好きで東京オリンピックはとても楽しみです。また特にサッカーが好きなので、旧国立競技場にも何度も通っていて、国際大会に対応でき観戦しやすい良い競技場を造ってほしいと思っています。しかし、奇抜なデザインにこだわって大切な税金を無尽蔵にを使うのは・・・
今回の見直しを機に、ぜひ良い改善プランを見出していただきたいなと思います。
※本記事は2015年7月現在の情報をもとに作成しています。
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