何かと話題の「外貨建て保険」。契約者からの苦情や問い合わせが増え続け、ついに金融庁が「可及的速やかに見直してほしい」と保険業界にメスを入れたことでニュースにもなりました。
外貨建て保険とは、簡単に言えば保険料を外国通貨で運用する保険商品のことです。超低金利と言われる現代の日本ではなかなか資産を増やしにくく、外国の日本よりも高い金利で運用することで、保険金や解約時の返戻金(以下、保険金等)を増やせるとして老後などの将来を考えた人に人気となっています。
しかし、外貨建て保険にはそれ相応のリスクや注意点があり、きちんと説明されていなかったり、理解していないまま加入してしまったことで今回の騒動になりました。
そこで本日は、「外貨建て保険」とはどんな保険商品であり、加入する前にどんなことに注意しておけばいいのかをご紹介します。これから加入を考えている人は、どんなメリット・デメリットがあるのかをきちんと理解したうえで、加入を検討しましょう。
外貨建て保険とは?
ここでもう少し詳しく、外貨建て保険について解説していきます。外貨建て保険とは、保険料を外貨(米ドルや豪ドル※)で支払い、保険金等を円換算して受け取る保険のことです。外貨の高い金利で運用するため、将来的に資産を有利に増やせる可能性があります。※豪ドル:オーストラリアドル
■外貨建て保険の種類
外貨建て保険は外貨で運用する仕組みを取り入れてはいますが、保険自体の仕組みは同じです。保険商品の種類は、終身保険、養老保険、個人年金保険などの貯蓄型で、掛け捨て型はありません。(2019年8月時点)
保険料の支払いは、一定額を毎月払う「月払い」と契約時に一度で払う「一時払い」がありますが、いずれも為替相場が影響するので注意が必要です。
■外貨建て保険のメリット
外貨建て保険のメリットは、外国の金利が日本の金利よりも高いため、資産(保険金)を有利に増やせる可能性があることです。マイナス金利政策が導入された日本では、金利となる予定利率が0.25%なのに対し、外貨(米・豪)では平均して2~3%と高く、金利面では、将来的な資産形成に大きく貢献できることがわかりますね。
関連記事:「返戻率と利率と利回りのちがいって?」
また、外貨で運用しているため、為替変動により保険金等を受け取るときの円レートが低く(円安)なっていれば、日本円で受け取る保険金が予定以上の金額となる可能性があります。このように、外貨建て保険は、保険とは言え資産運用の面が強いことを理解しておきましょう。
そのため、外貨建て保険には相応のリスクとデメリットがあります。加入を考えている方は、以下のリスクがあることに注意しておきましょう。
入る前に知っておきたい外貨建て保険の3つのリスク(注意点)
■為替変動による元本割れ
外貨建て保険は外貨で積み立てていく保険ですが、受け取りの際は日本円に換算して受け取ります。(外貨のまま受け取れる保険もあります)そのため、為替レートの変動により、円換算後の保険金等の額が契約時の想定や払込保険料の総額を下回ることがあり、損失が生ずる可能性があります。
たとえば、受け取る保険金等が10万ドルであった場合、円換算したときに1ドル=100円であったなら約1,000万円受け取ることができますが、1ドル=90円であった場合は900万円となってしまいます。為替相場で円が安くなっていればいいのですが、逆に円が高くなっていた場合には損をするかもしれないのです。
また、注意しておきたいのが、外貨建て保険は「元本」は保障されているかどうか。
外貨建て保険の多くでは、外貨での積立利率を最低保証として設定しており、日本より高い外国の利率で運用することにより定率で資産を増やすことができます。これを保険販売の説明で「元本保証」とする例はありますが、あくまで「外貨ベースで元本が減ることはない」と表現しているだけで、日本円で受け取る金額が保証されているわけではないことを理解しておきましょう。
■様々な手数料がかかる
外貨建て保険は、外貨と円を交換するための為替手数料が発生します。本来の保険商品では発生しない手数料なので、思っていたよりコストがかかってしまうというケースも多いようです。
為替手数料以外にも、契約時の手数料や運用手数料などのコストがかかります。保険は銀行のように手数料が明確にされていないため、どこにどんな手数料がかかるのかは契約時に聞いておくことをおすすめします。
■資産形成などのライフプランがイメージしにくい
外貨建て保険の満期は10年、20年後のように数十年先になることがほとんどですが、そのときの為替相場を予測することはほぼ不可能ですよね。為替レートがどのように変化するかはわからないため、受け取れる保険金等がどの程度になっているかを把握することが難しくなります。
そのため、もし、資産形成の多くを外貨建て保険にしてしまうと、ライフプランに狂いが生じたり、ライフプランそのものがイメージしにくくなります。外貨建て保険は余裕資金を充てる等にして、リスクが低く、予測を立てられる金融商品(円建ての保険、預貯金等)で同時に資産形成をするといったことを検討しましょう。
保険を正しく理解して、自分に合ったものを選ぼう!
「外貨建て保険」はリスクやデメリットも目立ちますが、きちんとリスクを把握し、財務状況や自分のライフプランと合っているならば、加入する魅力のある保険商品です。運用次第では資産を有利に増やすことができるでしょう。
ただし、生命保険でありながら投資リスクのある運用資産と捉え、為替動向をチェックしたり、分散投資などでリスクヘッジすることも念頭に置いておかなければなりません。
また、将来の資産のことを考えているなら、「個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)」や「つみたてNISA」などもあるので、自分に合っているものや管理しやすいものは何かをよく比較・検討して加入するようにしましょう。
当社ではお金のプロ(ファイナンシャルプランナー)が保険相談だけでなく、将来のための資産形成やお金に関する相談なども無料で行っているので、わからないことや相談したことがあれば、利用してみてください。
保険加入はメリット・デメリットなどの説明をきちんと受けて、納得できるものに加入することが大切です。その場で契約せずに一旦持ち帰り、わからなければファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するようにしましょう。
※本記事は、2019年8月21日現在の情報をもとに作成しています。
※本記事は、外貨建て保険への加入、および投資の勧誘や推奨を目的とするものではありません。
あわせて読みたい記事:「プロに聞く!マイナス金利と生命保険(前編)」
この記事が気に入ったら いいね♪
この記事が気に入ったら
いいね♪
MoneyMotto!の最新情報をお届けします