奨学金制度の現状と課題

奨学金

給付型奨学金創設の検討へ

こんにちは。Money Motto!編集長のみやこです。

奨学金の滞納が社会問題化するなか、返還不要の給付型奨学金制度の創設を求める声が高まっています。安倍首相は、3月末の会見で「本当に厳しい状況にある子どもたちには、返還がいらなくなる給付型の支援によって、しっかり手を差し伸べる」と発言しました。近い将来、学費や将来の返還を心配せずに進学ができるしくみが整備されるかもしれません。

本日は、奨学金制度ついて調べてみました。今や、大学生の半数以上が奨学金を利用する時代です。制度の現状と課題について考えてみましょう。

大学生の半数以上が奨学金を利用

独立行政法人日本学生支援機構がおこなった「平成26年度学生生活調査」によると、大学生(昼間部)の51.3%が、奨学金を受けています。

受給者が増えた背景には、親の年収の減少授業料・入学金の高止まり、学生自身の収入(アルバイト代など)の減少などがあります。

奨学金受給者割合の推移

調査年度 大学生(昼間部)
平成14年度 31.2%
平成16年度 41.1%
平成18年度 40.9%
平成20年度 43.3%
平成22年度 50.7%
平成24年度 52.5%
平成26年度 51.3%

受給者のうち約90%が、返還の必要な日本学生支援機構の奨学金を利用しています。

日本学生支援機構の奨学金制度

日本学生支援機構の奨学金制度には、無利息で貸与される第一種奨学金と、上限3%の利息がかかる第二種奨学金があります(第一種と第二種の併用も可能)。どちらも、大学、短大、高等専門学校、専修学校(専門課程)、大学院に在学する学生・生徒を対象としています。

  第一種奨学金
利息 無利息
貸与額  
(国公立・自宅通学) 月額3万円または4.5万円
(国公立・自宅外通学) 月額3万円または5.1万円(自宅通学の月額も選択可)
(私立・自宅通学) 月額3万円または5.4万円
(私立・自宅外通学) 月額3万円または6.4万円(自宅通学の月額も選択可)
学力基準  
(予約採用) 高校等の1年から申込時までの成績の平均値が3.5以上
(在学採用・1年次) 高校等の最終2年の成績の平均値が3.5以上
(在学採用・2年次以降) 大学での成績が所属する学部(科)の上位1/3 以内
収入上限額の目安(予約採用)※1  
(給与所得・3人世帯) 657万円(控除前) 
(給与所得・4人世帯) 747万円(控除前) 
(給与所得以外・3人世帯) 286万円 
(給与所得以外・4人世帯) 349万円 

※1 在学採用の場合は、上記の収入基準と異なります。

  第二種奨学金
利息 上限3%
貸与額 月額3万円、5万円、8万円、10万円、12万円から選択
・私立大学の医・歯学部の場合、12万円に4万円の増額が可能
・私立大学の薬・獣医学部の場合、12万円に2万円の増額が可能
学力基準 ・高校等(在学採用の場合は高校等または大学)の成績が平均水準以上
・特定分野に特に優れた資質能力があると認められる者
・大学での学修に意欲があり、学業を確実に修了できる見込みがあると認められる者
収入上限額の目安(予約採用)※2  
(給与所得・3人世帯) 1,009万円(控除前)
(給与所得・4人世帯) 1,100万円(控除前)
(給与所得以外・3人世帯) 601万円
(給与所得以外・4人世帯) 692万円

※2 在学採用の場合は、上記の収入基準と異なります。

平成27年度に日本学生支援機構の奨学金を利用した学生・生徒は130万人を超え、そのうちの約2/3が第二種奨学金となっています。平成10年度までは、第二種奨学金の受給者は10万人に満たなかったのですが、年々人数が増加し、平成23年度には90万人を超えました。平成11年の制度改革で、基準を満たす希望者全員に対して奨学金の貸与がおこなわれるようになったことが、増加の主要因です。

奨学金の返還

日本学生支援機構の奨学金は貸与なので、卒業後、奨学金を受けた本人に返還義務が発生します。大学4年間(48か月)で奨学金を利用した場合の貸与総額と返済額をみてみましょう。

第一種奨学金 貸与総額 返還月額 返還回数(年数)
国公立(自宅通学)       
 月額3万円 144万円 9,230円 156回(13年)
 月額4.5万円 216万円 12,857円 168回(14年)
国公立(自宅外通学)       
 月額3万円 144万円 9,230円 156回(13年)
 月額5.1万円 244.8万円 13,600円 180回(15年)
私立(自宅通学)       
 月額3万円 144万円 9,230円 156回(13年)
 月額5.4万円 259.2万円 14,400円 180回(15年)
私立(自宅外通学)       
 月額3万円 144万円 9,230円 156回(13年)
 月額6.4万円 307.2万円 14,222円 216回(18年)
第二種奨学金 貸与総額 返還月額 ※3 返還回数(年数)
月額3万円 144万円 9,230円 156回(13年)
月額5万円 240万円 13,874円 180回(15年)
月額8万円 384万円 16,855円 240回(20年)
月額10万円 480万円 21,069円 240回(20年)
月額12万円 576万円 25,282円 240回(20年)

※3 年利0.5%で計算

当たり前ですが、貸与総額が多いほど返還総額も多くなります。貸与総額や返還方法は、奨学金の申し込みをする前に把握することができます。「いくら借りているのか」「返還にかかる金額と期間はどれくらいか」を考慮したうえで、奨学金制度の利用を検討すべきでしょう。

奨学金の滞納問題

近年、奨学金の滞納問題を目にすることが多くなりました。就職難や低収入が原因で、返還に支障をきたす人が増えているといわれています。新聞やテレビ、インターネットなどで問題が大きく取り上げられると、「多くの若者が奨学金を返せずに困っている」と考えてしまいがちです。もちろん、就職難や低収入のために返還ができない人がいることは事実ですが、滞納が起こる原因はそれだけではありません。

奨学金返還義務がある人のうち、3か月以上の延滞があったのは約4.8%です(平成26年度データ 日本学生支援機構 )。ここ20年間をみても延滞率に大きな変化はなく、ほとんどの人がきちんと返還をおこなっています。しかし、奨学金受給者の増加にともない、延滞者数は大きく増加しています。奨学金の利用が身近になったぶんだけ、返せなくなる人数も増えているというわけです。

また、延滞をする人としない人には、奨学金制度の理解に大きな差があることがわかりました。日本学生支援機構が発表した『平成26年度奨学金の返還者に関する属性調査結果』をみてみましょう。

・奨学金申請時の書類作成者

延滞者 奨学生本人 33.6% 親 37.7%

無延滞者 奨学生本人 55.9% 親 19.7%

・返還義務を知った時期

延滞者 申込手続きをおこなう前 49.5% 返還開始~督促前 5.0% 延滞督促を受けてから 9.8%

無延滞者 申込手続きをおこなう前 90.3%

・返還期限猶予制度の認知状況

延滞者 奨学金に申し込む前から知っていた 2.1% 延滞督促を受けてから知った 44.1%

無延滞者 奨学金に申し込む前から知っていた 13.0% 返還が始まる前までには知っていた 21.1%

なんと、延滞者の半数以上は、返済義務があることを知らずに奨学金の申請をおこなっています!延滞者は、親が申請書類を作成している割合が高く、本人が制度を理解しないまま奨学金を受けているケースも考えられます。 奨学金の利用が当たり前になった現在では、教員や親にも奨学金=借金という感覚が薄れてきているのかもしれません。 また、督促を受けるまで返還期限猶予制度を知らない人も多くいます。 いっぽう、無延滞者は自分で申請書類を作成している割合が高く、早い時期から返還義務や返還期限猶予制度を知っています。 本人やまわりの人の知識・情報の格差が、滞納問題を生んでいるといえそうです。

返還を滞納してしまうと、延滞金の賦課、督促、個人信用情報機関への情報提供(いわゆるブラックリストへの記載)がおこなわれ、将来、住宅ローンやクレジットカードの審査に通らなくなるおそれがあります。学生や社会人になったばかりの年齢では、「お金の信用を失うこと」の重みが理解できないかもしれません。しかし、いったん信用を失うと、それを取り戻すのに長い時間を要するのもまた事実です。滞納は極力避けたいところです。

債務

日本学生支援機構に限らず、日本の奨学金制度の多くは貸与型です。「返す」ことを前提とした制度であることを理解したうえで、無理のない利用を心がけましょう。同時に、本当に困難な状況にある人が安心して利用できる奨学金制度の創設を期待します。

※本記事は2016年4月8日現在の情報をもとに作成しています。


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