地震保険の問題点と今後への期待

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2011年3月11日に発生した東日本大震災から、本日で5年の節目をむかえます。

あらためて犠牲になられた方々へご冥福をお祈りするとともに、被災された全ての皆さまへ心よりお見舞い申し上げます。

 

被災者をいまだに苦しめる、二重ローン問題とは

「もう住めない家のために、毎月十数万円も払い続けなきゃいけないのか!」

東日本大震災では、そんなやり場のない憤りを持った人が何万人も生み出されました。地震や津波といった自然災害に見舞われても、住宅ローンが免除されることはないからです。被災者は震災で自宅を失ってしまっても、住宅ローンの残額を支払い続けなければいけません。

住む場所がない被災者の中には新たに家を建て直す人もいますが、2つの住宅ローンが大きな負担としてのしかかります。また、崩壊した家のローン払いだけで精一杯で、新しく家を建てることを諦める被災者も大勢います。こういった二重ローン問題が、震災後の人々をいまだに苦しめているのです。

どう対策すればよいのか

自力での問題解決が難しいとなると国の保護に期待したいところですが、いまだ充分な支援は確立されていません。2007年に中越大震災を契機として被災者生活再建支援法が改正されましたが、家が全壊してしまっても最大で300万円が支給されるのみで、とても生活再建ができる金額ではありません。

2011年には、最大500万円及び地震保険金の家財相当分を残して債務の減免を受けられる「被災ローン減免制度」が適用され始めましたが、立法化までは至らずガイドラインの制定に留まっています。現状では制度適用の申請をしても却下されるケースも多く、また制度の立法化や拡充を求める動きも強くありますが、将来的にどうなるかは未知数です。

やはり今の段階では、自助努力での備えは不可欠だと言えるでしょう。

考えられる対策は次の2点です。

① 住宅ローンの見直し

まずは、そもそもの住宅ローン金額をしっかり考えましょう。ローンを「適正な」金額に設定することで、リスクはだいぶ軽減することができます。現在組んでいる、または組もうとしている住宅ローンの金額は、仮に今勤めている会社をリストラされたり転職で月給が大幅に下がったとしても、支払い続けられる額でしょうか。ぜひ一度、自分に合っている金額かを見直してみることをお勧めします。

不動産業者や金融機関も営利目的ですから、物件購入の際には借入できる最大の金額を提示するケースもあるでしょう。しかしそれはローンが組める額というだけで、少ないリスクで返済できる額というわけではありません。自身の返済余力や地震以外のリスクも考慮し、急な生活環境の変化などがあっても耐えられる範囲でローンを組むことを意識しましょう。理想のマイホームのために背伸びをしすぎて、住宅ローン借入限度額いっぱいの物件を選ぶようなことは避けましょう。

② 地震保険の加入

もう一つの対策は、何と言っても地震保険への加入です。しかし損害保険料率算出機構の資料を見ると、日本の地震保険加入率は28.8%とかなり低い割合です。リスクを受け入れた上で未加入なのであれば理解はできますが、そうでなければ再度検討する必要があるでしょう。持ち家の人やローン残高が多い人は、特に必要性が高いと思われます。また地震保険は建物のみを対象としている人が半数以上ですが、その場合は家財の被害は補償対象外となりますので、その点も注意が必要です。

正直なところ地震保険には問題点も多い、しかし…

ただし現在の地震保険には、いくつもの問題点があります。地震保険不要論者が根強くいるのはこのためです。以下、筆者の考える地震保険のマイナスポイントを列挙します。

1. 損害補償額が最大でも火災保険の50%止まりである点

2. 新価ではなく時価の評価である点

3. 火災保険とセットで加入しなければならない点

4. 地震保険の商品競争が存在しない点

5. 補償内容と比較して保険料が高い点

まず1.についてですが、たとえば火災保険の保険金額を自宅の購入価格である3,000万円に設定したとして、火災による被害では3,000万円が支払われますが、地震による被害では最大で1,500万円までしか支払われません。さらに補償額についても、建物最大5,000万円、家財最大1,000万円という限度額が存在します。東日本大震災では建てたばかりの家が津波で流されたというニュースも見かけましたが、保険金だけで同じグレードの家を建て直すことはできません。

次に2.についてですが、火災保険の場合、被害額は新価(再調達価格)で計算されます。簡単に説明すると、建築から何年経っても新築時の価値で評価されるということです。(新価の説明は難しいので、詳細はこちらをご確認ください。)しかし地震などで崩壊してしまった場合は時価評価となるため、保険金は経過年後の価値でしか支払われません。仮にその家の価値が新築時の3,000万円から20年後に1,000万円まで落ちてしまっていたとしたら、その半分の500万円が補償額となります。

3.から5.は関連した問題ですが、地震保険は火災保険とセットでしか加入できないため、自由度が高くありません。また国が主導で運営している制度であるため、どの損害保険会社から加入しても価格や補償内容に差がありません。つまり商品競争が全く起きていない状態です。もし保険会社独自の地震保険の販売が許されれば、企業努力により今よりも補償内容が魅力的で保険料も抑えられた地震保険が登場する可能性もあるのですが…。

以上のように問題点の多い地震保険ですが、それでも加入する価値はあると考えます。時価の半額とはいえ失われた住居の補償額が支払われることで、未加入者と加入者では生活再建への負担はだいぶ違ってきます。被災後の宮城県で、火災保険への地震保険付帯率が85%にまで跳ね上がったのは、住民が地震保険の必要性を痛感した証拠だと思います。

また最近では、地震保険に追加して最大900万円までを補償する地震補償保険や、地震保険の補償割合を100%にする特約を用意する保険会社も出てきています。補償の手薄さに不安のある人は、それらを利用しても良いでしょう。

終わりに

地震保険は完璧ではありません。現在の地震保険は、1964年の新潟地震による被災者救済に火災保険が役に立たなかったことから社会的な必要性が高まり、1966年に田中角栄政権が実現させたものです。しかし創設から半世紀が経ち、当時とは事情も大きく変わりました。本日3月11日で東日本大震災から5年。現状の地震保険では被災者保護に不充分な点も多く、地震保険の制度そのものを見直すべきときが来ているのでしょう。(あべし)

※本記事は2016年3月現在の情報をもとに作成しています。


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