プロに聞く!マイナス金利と生命保険(後編)

生命保険

生命保険に出始めたマイナス金利の影響とは

こんにちは。Money Motto!編集部です。
2016年2月16日からマイナス金利が導入されました。マイナス金利は日本史上初の金融政策です。これからマイナス金利が私たちの生活にどのような影響を与えるのかを知っておくことが大切です。そこで、Money Motto!編集部ではお金のプロ、ファイナンシャルプランナーの仲和成氏(以下、仲FP)をお迎えしました。マイナス金利導入が私たちの生活にもたらすメリットやデメリット、特に生命保険における注意点についてお話をお伺いしました。

前編はこちら:「プロに聞く!マイナス金利と生命保険(前編)


インタビュー:Money Motto!編集部(保険マンモス株式会社)
取材協力:ファイナンシャルプランナー 仲和成氏(株式会社FPブレーンコンサルティング)
※保険マンモス株式会社提携ファイナンシャルプランナー

仲和成FP

マイナス金利の影響で運用益が下がる可能性

(Money Motto!編集部)
生命保険はマイナス金利でどのような影響を受けるのでしょうか。

(仲FP)
生命保険会社はお客様の保険料を預かり、保険金の支払いのために貯めています。責任準備金といいます。そして、ただ保有しているだけでなく、運用をしています。それらは比較的安全といわれる国債で運用しています。先日導入されたマイナス金利の影響で国債が買われ、長期金利がマイナスになりました。この事は持っている国債の値上がりを意味するので、瞬間的に保険会社の運用にはプラスに作用します。しかし、今後、持っている国債が満期償還になった場合や、途中で売却をした場合に次の運用先として金利が低い、つまり値段が高い国債に投資しなければならず、私たちと同様、運用先に困ります。運用益が見込めなくなると保険料の値上げや解約返戻金の押し下げ等の動きが出てくるでしょう。生命保険各社の動向に注意していきたいと思います。

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加入している生命保険はどうする?

仲和成FP

(Money Motto!編集部)
現在、加入している生命保険の注意点を教えてください。

(仲FP)
まずお伝えしたいことは、今回のマイナス金利うんぬんは置いておいて・・・。みなさんが今、何の保険に加入しているのかをしっかり把握してほしいということです。これはとても大切なことです。残念ながら、把握できている方は非常に少ないのが現状です。

(Money Motto!編集部)
わかりました。今加入している保険を確認してみます。

(仲FP)
ぜひ、お願いします。注意点としては、今加入している保険の保険料はマイナス金利の影響を受けて、値上がりすることはないということです。それと、今後保険料が上がるかもしれないから何か保険に入るのであれば急がなきゃと考えている方もいらっしゃると思いますが、加入したほうがよい保険もあれば、必要のないものもあります。急いで飛びつくようなことはおすすめしません。繰り返しになりますが、保険料には生命保険会社が事業運営に必要なコストがかかっていますし、掛け捨て部分が含まれる商品も少なくありません。ご自身の保険を今一度確認してみてください。

(Money Motto!編集部)
今の保険の内容を把握することや、必要な保険を自分で見つけることはできますか。

(仲FP)
そうですね・・・、完璧にはむずかしいかもしれません。でもある程度はわかりますし、気づきも得られると思いますよ。調べてみてもわからなかった、調べるのが苦手という方は私たちファイナンシャルプランナーに聞いていただくとよいと思います。

(Money Motto!編集部)
どのようなアドバイスをされるのでしょうか。

(仲FP)
私は保険のコストを最小化するプランをご提案することが使命だと思っています。現状、月に何万円、総額で何百万円も保険料を掛け捨てにしている方がいらっしゃいます。とても見逃せる状況ではありません。過去には、生命保険は掛け捨て、お金は財形貯蓄や定期預金または投資信託などの運用商品に預ければよいという専門家の主張もありました。しかし、先ほども言ったとおり、マイナス金利のデメリットとして、リスクを嫌う預金利用者にとって益々不利な時代になりました。保険料のコストを見直し、「保険は保障ではなく貯蓄」という観点で考えていくとよいと思います。

利率変動型と固定型、それぞれの影響は

(Money Motto!編集部)
利率変動型の保険は、マイナス金利導入後に利率が下がってしまうのでしょうか。

(仲FP)
いいえ。下がることはありません。マイナス金利が導入されても最低保障利率が設定されているので、影響は受けません。ただ、利率が上がることもなさそうなのが現状です。

(Money Motto!編集部)
なるほど。なんとなくですが、マイナス金利が導入されるような状態の場合、固定型のほうが減ったり増えたりしないからリスクが少ないのかと考えてしまいます。

(仲FP)
固定だから減らないという考え方だけだと良くありません。固定型の保険は、今回のマイナス金利とは別のメカニズムで動く「インフレに弱い」という問題があります。また年齢や性別によっては、固定よりも利率変動型のほうが有利なものもありますし、その逆もあります。ちなみに変動金利の利率にも二種類あり、市場の金利に連動するものと国債の利回りに連動するものがあります。検討する際には、どちらの仕組みもしっかり理解した上でご自身にあったものを選んでほしいと思います。

(Money Motto!編集部)
なるほど。金利と生命保険は密接な関係があるのですね。さて、保険にはいくつかの種類がありますが、それぞれマイナス金利の影響度を教えてください。

(仲FP)
影響が大きいものと小さいものがあります。定期保険は影響が小さいと思います。保険料を下げたいというのであれば、健康割引の適用が受けられるよう、禁煙やメタボ対策をするとよいでしょう。影響が大きいものは、やはり貯蓄性の高い保険です。終身保険、個人年金保険、養老保険、学資保険がこれにあたります。この保険に入りたいという考え方ありきではなく、備える方法としてベストなものを選んでほしいと思います。

保険種類別影響度とアドバイス

保険種類 影響度 アドバイス
定期保険 保険料を下げたい場合は、禁煙やメタボの改善で健康割引の適用される商品を検討することがおすすめ。
終身保険 長期契約で貯蓄性が高いため、予定利率が低く見直された場合には、保険料の値上げが考えられる。利率は固定型と変動型があるので、それぞれのメリットとデメリットを理解して選ぶことが必要。
医療保険
がん保険
特定疾病保険
終身保険や年金等の貯蓄性が高い商品と比べると影響は小さい。ただし、保険期間が長期にわたるもの、健康祝い金や解約時の返戻金がある商品は、予定利率の見直しにより保険料の値上がり、貯蓄部分の受取額が減少する可能性があるため、注意が必要。
個人年金保険 貯蓄性が高い商品のため、予定利率が低く見直された場合には、保険料の値上げや年金額の低下等の可能性がある。老後に備える手段として適切かどうかも含め、早めの検討が必要。
養老保険 死亡保障と貯蓄性の高い満期保険金があるため、予定利率が低く見直された場合には、保険料の値上げや満期時の保険金額の低下等の可能性がある。貯蓄の手段として考える際は、早めの検討が必要。
学資保険 子どもの高校や大学入学時等に一時金が受け取れる貯蓄性が高い商品のため、予定利率が低く見直された場合には、保険料の値上げや一時金の低下等の可能性がある。また、今後は販売停止になる可能性もある。教育費に備える手段として適切かどうかも含め、早めの検討が必要。

(仲FP)
どのような保険に入りたいかというお客さまご自身の本当の意向は、保険の基本を理解し、たくさんの商品を比較検討できる環境が整ったとき、初めて明確になります。ですから、保険を提案する側に「お勧め商品は存在しない」というのが、私の自論です・・・。ですので、ファイナンシャルプランナーへの相談は、お勧めを提案してもらうのではなく、保険を選ぶという感じで考えていただければと思います。

(Money Motto!編集部)
はい!「マイナス金利」、初めて聞く言葉で、どのような影響があるのか不安もありました。特に私たちの生活に直結する生命保険や貯蓄について改めて考えるきっかけになりました。ありがとうございました。

編集部まとめ

ポイント1:マイナス金利のメリットとデメリットを知る
メリットは住宅ローンや教育ローンなど、お金を借りるときの金利が有利になることが期待されること、デメリットは資産運用の手段が限られてしまうことです。なお、「マイナス金利導入=預金がマイナスになる」ではない点についてはご安心ください。

ポイント2:マイナス金利の影響が大きい商品を知る
金利と生命保険には密接な関係があります。これから生命保険の加入を検討される方は、商品によっては、保険料の値上がりや販売停止が想定されますので、「保険種類別影響度とアドバイス」を参考にしてみてください。なお、すでに加入済みの生命保険の保険料がマイナス金利の影響で値上がりすることはない点はご安心ください。(※更新タイプの保険の場合等には、更新後の保険料が想定よりも高くなる可能性があります)

ポイント3:今ご自身が入っている生命保険の内容を把握することが大切
マイナス金利が導入された今だからこそ、生命保険の見直しを検討してみてはいかがでしょうか。その際に、一番大切なことはご自身が何の保険に入っているかを把握することです。わからないという方はファイナンシャルプランナーに相談する方法もあります。必要な保険選びや保険料を減らすアドバイスを受けることができます。

●販売停止、予定利率および保険料変更などが発表された商品
(※2016年10月5日現在 各社報道による)

保険会社 対象商品など 措置
第一フロンティア生命保険 一時払い終身保険 2016年3月から販売停止
個人年金保険 2016年3月から販売停止
富国生命 一時払い終身保険の一部 2016年3月から販売停止
住友生命 一時払い終身保険の一部 2016年3月から保険料を引き上げ
明治安田生命 一時払い特別終身保険 2016年3月から予定利率を引き下げ
一時払い終身保険の一部 2016年4月から販売停止
一時払い変額個人年金の一部 2016年10月から提携する銀行窓口での販売停止
学資保険の一部 2016年10月から販売停止
かんぽ生命 10年間分の前納払込保険料 2016年4月から0.12%値上げ
一時払い定期年金保険の一部 2016年6月から販売停止
学資保険の一部 2016年6月から販売停止
日本生命 銀行窓口で契約時に一括して保険料を積み立てる円建て一時払い終身保険 2016年4月から販売停止
一時払い終身保険の一部 2016年10月予定利率を、現在の年0.5%から0.25%に引き下げる方針
第一生命 一時払い終身保険 2016年4月から保険料を引き上げ
太陽生命 銀行窓口販売の一時払い年金保険 2016年4月から販売停止
朝日生命 営業職員が販売する一時払い終身保険 2016年4月から販売停止
営業職員が販売する一時払い個人年金保険 2016年4月から販売停止
東京海上日動あんしん生命 低解約返戻金型終身保険(無配当) 2016年5月から販売停止
ソニー生命 5年ごと利差配当付養老保険 2016年5月から販売停止
養老保険(無告知型) 2016年5月から販売停止
一時払終身(無告知型) 2016年5月から販売停止
AIG富士生命 低解約返戻金型終身保険(無配当) 2016年6月から販売停止
逓増定期保険(無配当) 2016年6月から販売停止
一時払介護保険 2016年6月から販売停止
低解約返戻金型介護認定一時金給付保険(無配当) 2016年6月から販売停止
アフラック(アメリカンファミリー生命保険会社) 終身保険(低解約払戻金型)※未来の自分が決める保険WAYS 2016年7月から販売停止
※2016年7月において11月2日より販売を再開する予定
学資保険の販売を縮小 2016年4月から保険ショップでの取り扱い停止
個人年金保険 2016年10月から販売停止
損保ジャパン日本興亜ひまわり生命 個人年金保険 2016年7月から販売停止

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