規制緩和とは?
規制緩和は、自由競争を制限する公的規制を撤廃・緩和して、サービスや生産性を向上させることをねらいとしています。規制緩和推進の根拠となっているのが、規制によって守られてきた既得権益をなくすことで新規参入企業が増え、消費者が自由かつ適切な選択ができるようになり、経済が活性化するという理論です。
アベノミクスの成長戦略の柱となっている政策が、さまざまな分野での規制緩和です。
規制緩和の例
規制緩和は、ここ数年で始まったものではなく、1980年代からおこなわれてきました。これまでの規制緩和の一例をみてみましょう。
・日本電信電話公社民営化(1985年)
電気通信事業への参入が自由化される
民営化後、日本電信電話公社は日本電信電話株式会社(NTT)となる
・労働者派遣(1986年)
労働者派遣法施行により、労働者派遣制度が認められる
・国鉄民営化(1987年)
国鉄が、JRとして6つの旅客鉄道会社と貨物鉄道に分割・民営化される
鉄道業以外の事業も自由におこなえるようになる
・金融ビッグバン(1996年~)
日本の金融市場を活性化するために打ち出した金融改革
銀行窓口での投資信託販売が導入される(1996年)
保険業法改正により、生命保険と損害保険の相互参入が自由化される(1996年)
証券会社が免許制から原則登録制に移行される(1998年)
外国為替法改正により、銀行での外貨預金の取扱が始まる(1998年)
損害保険料率が自由化される(1998年)
株式委託手数料が完全自由化となる(1999年)
・貸切バス事業の規制緩和(2000年)
・乗合バス事業の規制緩和(2002年)
事業参入が、免許制から許可制に移行される
運賃が、許可制から届出制に移行される
・医薬品販売の規制緩和(2009年)
薬事法改正により、コンビニ等での一般医薬品の販売が認められる
・企業の農業参入(2009年)
農地法改正により、企業の農業参入要件が緩和される
昨年大きな注目を集めた電力自由化も規制緩和のひとつです。
規制緩和のメリット・デメリット
規制緩和には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
もっとも大きなメリットは、価格低下です。新規参入と自由競争により、電話料金、バスツアー料金、銀行や証券会社に支払う手数料、損害保険料などの価格が低下し、消費者はサービスを利用しやすくなりました。また、企業も、労働者派遣制度により人件費を安く抑えることができるようになりました。
競争が活発化することにより、技術革新や商品開発が促進され、商品の質やサービスが向上するというメリットもあります。規制緩和によって、さまざまな選択肢の中から自分に合った商品やサービスを選ぶことができるようになりました。携帯電話がその好例です。
いっぽう、デメリットにはどのようなものがあるのでしょう。規制緩和により格差がますます拡大するという懸念があります。正社員と派遣労働者などとの所得格差、資産を持つ人と持たない人との受けられる恩恵の格差、体力のある大企業と体力のない中小企業との格差などがあげられます。
また、過当競争による価格低下が原因で、安全対策が犠牲になったり、コンプライアンス軽視や不祥事が起こったりするケースもあります。
消費者が自由に商品やサービスを選べるということは、自己責任の裏返しでもあります。好むと好まざるとに関わらず、自分で適切な判断・選択をしていかなければならない時代になったということです。
価格低下やサービスの向上などの規制緩和による恩恵は、消費者にとってはたいへん歓迎すべきものです。しかし、規制緩和が原因で、目に見えにくい部分での格差が拡大していることもまた知っておかなければなりません。
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