お試しもできる!今どきの地方移住3種とお金のハナシ

新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の流行により地方移住に興味を持つ人が増えていることをご存じでしょうか?

その背景の一つとして、感染拡大防止のためにリモートワークの普及が加速し、働く場所が自由になってきていることがあるようです。

実際に私も、新型コロナ流行前から持っていた「いつか地方に移住してのんびり暮らす」という夢が少し現実に近づいたのを感じています。

しかし、慎重で心配性すぎる私は、『いきなり移住して、もし自分に合っていなかったら…』や『生活していけるだけの収入は得られるの?』など生活環境の変化やお金に関する不安も持っています。

そこで地方移住について調べてみると、以前よりも移住の形は多様化していて、「いきなり移住」ではなく「お試し」や「ライト」な形で叶えることができると分かりました。

そこでここでは、地方移住を考えている人に関する調査データや、お試し移住を含めた「移住の最新形態」、気になる移住にかかるお金のことをお伝えします。

移住に関心を持つ人が増えている!どんな人がどんな理由で移住を考えるの?

それでは早速、新型コロナ流行前後での移住検討者の変化と、どんな人がどんな理由で移住を考えているのか見ていきましょう!

内閣府の調査によると、東京圏在住者で新型コロナ流行前(2019年12月)に移住に興味を示したのは全体の25.1%、新型コロナ流行後(2020年12月)では全体の31.5%と6.4ポイント増加していることがわかりました。※後述する移住のタイプは問わず

新型コロナ禍での移住への意識の変化

出典:内閣府「第2回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(令和2年)

少し長い期間で見てみましょう。下図は2008年から2020年のNPO法人ふるさと回帰センターの来訪者の推移※2です。同センターは地方移住に関する相談ができる場所で、来訪者は新型コロナ前(2019年)までの11年間ですでに20倍近く増えています。

2020年は新型コロナの影響で「面談・セミナー参加等」が前年に比べて激減していますが、電話等での問い合わせは前年比1.2倍となっています。もし「面談・セミナー参加等」が前年と同じだとすると相談・問い合わせ数は53,040件となり、前年よりも増えていたことになります。

新型コロナ流行前からすでに移住への関心は高まっていて、コロナ感染後にもその関心は増加傾向にあることが分かります。

長期的な移住希望者数の推移

出典:認定NPO法⼈ふるさと回帰⽀援センター「地⽅移住に関するアンケート」2020年 ※後述する移住のタイプは問わず

地方移住に興味のある人の年代・家族構成

では、どのような人が移住に関心を持っているのでしょうか。年代別に見てみましょう。

下図は、同センター利用者の年代の推移です。2008年は50~70代が全体の約70%を占めていることがわかります。

ところが年々、20~40代の割合が高くなり、2020年には20~40代が全体の約75%を占め、2008年から多数派の年代が逆転しました。

移住希望者の年代の推移

出典:認定NPO法⼈ふるさと回帰⽀援センター「地⽅移住に関するアンケート」2020年

続いて、移住に関心を持つ人を家族構成別にみていきましょう。

リクルート住まいカンパニーの行った調査によると、下記の通りになりました。

  • 同居人や同居家族がいない/1人暮らし 39.6%
  • 配偶者のみ 35.2%
  • 子どもがいる世帯(幼児~幼稚園までの子どもがいる) 40.3%

「東京都民が移住・二拠点居住したいエリアランキング調査」(2021年)より

地方移住に興味のある人の理由

先述の内閣府の調査によると、地方移住への関心理由の上位2位は下記のようになりました。

  • 人口密度が低く自然豊かな環境に魅力を感じたため
  • テレワークによって地方でも同様に働けると感じたため

新型コロナの感染拡大防止のために推進されているテレワークの普及が地方移住に関心を持つきっかけの一つとなっているようです。

移住にはどんな種類がある?

移住には主に3種類あります。

では、移住にはどのような種類があるのでしょうか。

代表的なのは下記3種類です。

  1. 定住
  2. デュアルライフ(二拠点生活)
  3. ワーケーション

ワーケーションをなぜ移住に含めたか、詳細は後述します。

これら3種を大まかに比較してみました。

移住3種類の比較表

では、それぞれの移住を実施している人がどんな人か、実際に行うにはどのようなお金がかかるかなど、詳細をみていきましょう。

移住① 定住

まずは定住からみていきましょう。一般的に「移住」というと、この定住を指す場合が多いようです。

移住とは、今まで住んでいた地域を離れて新しい居住地域に移り、永久的に住み続けることです。

定住をしている人はどんな人?

総務省の「過疎地域の人口移動に関するデータ分析」(2018年)によると、都市部から過疎地域への移住を行った人は、属性別に下記のようになりました。

  • 独身 51.5%
  • 配偶者あり(子どもの有無問わず) 48.3%

わずかですが、結婚をしている人よりも独身の方のほうが多いようですね。

では、どのような職業の人が多いのでしょうか。移住前と移住後で比較すると下記の通りになりました。

◆移住前

  • サービス業 35.3%
  • 製造業 11.5%

◆移住後

  • 無職・未定 30.9%
  • サービス業 27.9%

定住にはどんなお金がかかる?

定住を検討されている方が気になるのは、初期費用と維持費ですよね。

未就学の子どものいる3人家族世帯を例に、見てみましょう。

まず初期費用です。

初期費用には引っ越しや住居、地方移住では必要になる自動車の購入などを含め、下表のように約141万円がかかります。

移住(定住)の初期費用

日本FP協会『「地方移住」で気になるお金の話』より引用

次に維持費です。

同じく未就学の子どものいる3人家族世帯の場合、移住後の支出は月額211,000円となりました。

移住前と移住後での維持費を比較すると、収入が減り支出は減るものの、収支は移住後の方が減るという結果になりました。

移住(定住)の維持費

日本FP協会『「地方移住」で気になるお金の話』より引用

定住の「トライアル」および「助成金」

いきなり引っ越すのは不安という方に嬉しいのが、地方での生活を実際に体験することのできるサービスです。

各自治体がさまざまなプログラムを行っていますが、住居の貸し出しは多くの自治体で行っています。

例えば人気の移住先ランキングである長野県 山ノ内町では、同町に移住を考えている人に向けて、下記のような住居貸し出しを行っています。

  • 対象者:山ノ内町に移住を考えている人
  • 日数:6泊7日~29泊30日
  • 料金:1日 1,500円 ※冬期間(11月~4月)は1日 2,000円
  • 設備:コンクリートブロック造り2階建て住居(家電、掃除用具、ガス暖房機、台所用品等、光回線のネット環境、駐車場完備)
  • 使用者が用意するもの:寝具、食品、風呂用品、洗面用品、薬、ティッシュペーパー、その他施設内に無い物

※詳しくは長野県山ノ内町のウェブサイトをご確認ください。

一般社団法人 移住・交流推進協議会では、移住を検討している人に向けて、各地の移住体験プログラムを紹介しています。参考にしてみてください。

移住② デュアルライフ

デュアルライフは、「二拠点生活」「ニ地域居住」などと呼ばれています。

都市に住む人が、都市の住居に加えて農山漁村等の地域に生活拠点を持ち、中長期・定期的・反復的に滞在することを指します。

デュアルライフをしている人はどんな人?

デュアルライフを実際に行っている人を対象にした調査※によると、デュアルライフを行っている人の属性は下図のとおりです。

デュアルライフ実施者の属性

出典:リクルート住まいカンパニー「デュアルライフ(2拠点生活)に関する意識・実態」調査(2018年)

デュアルライフにはどんなお金がかかる?

デュアルライフは二拠点に居住するため、一拠点で生活する場合に比べて下記のように余計にかかる費用が発生します。

  • 家賃や家電・家具などが二拠点分必要(空き家レンタルが希望者多い)
  • 二拠点を移動する際の交通費がかかる
  • 二拠点とも持ち家の場合、固定資産税が2軒分かかる

デュアルライフの「トライアル」および「助成金」

2021年3月に国土交通省を始めとした関係省庁および全国約600の地方公共団体が参加した「全国二地域居住等促進協議会」が発足。

全国の空き家と二拠点居住希望者のマッチングや、さまざまな支援策を検討していくようです。

支援制度を実施している自治体はすでにあり、下記のような例があります。

◆こまつデュアルライフ支援制度

石川県小松市は、補助金という形で支援を行っています。

  • 対象者:小松市にて、お試し居住やテレワーク、その他地域活性化のための活動や取組を行う人
  • 補助金額:一戸建ての場合 月額1万円(家賃の2分の1が1万円を下回る場合はその額)を3ヶ月分
  • 補助金額:共同住宅の場合 月額5千円(家賃の2分の1が5千円を下回る場合はその額)を3ヶ月分

※月額家賃には管理費や駐車場費は含みません。

※詳しくは石川県小松市のウェブサイトをご確認ください。

移住③ ワーケーション

ワーケーションとは「Work」と「Vacation」を組み合わせた造語です。

テレワークを活用し、リゾート地・温泉地等で余暇と仕事を両立させるものです。

2020年7月に、政府が新型コロナウイルス感染拡大による観光業界の低迷への対策としてワーケーションの普及に取り組む考えを示しました。

政府が掲げるワーケーションの目的は観光業の活性化だけでなく、過疎地域への誘致や地方の空き家活用など多くあるため、最もライトな移住への入り口として本ページではワーケーションを移住に含めました。

利用方法としては、出張や休暇中の個人での利用か、社員の働き方のひとつの制度として導入している企業の社員が会社を通して利用するかの2通りが主流です。

実際にワーケーションに関する制度を導入している企業は、日本航空株式会社、ユニリーバ・ジャパン、株式会社野村総合研究所、日本マイクロソフト株式会社、ランサーズ株式会社などとなっています。

ワーケーションをしている人はどんな人?

ワーケーションは始まったばかりなため、実際に行った人の調査データはまだあまりありません。

先述の内閣府が行った調査によると、ワーケーションの実施希望者がどのようなタイプのワーケーションを希望しているかを聞いた結果は下記のとおりです。

ワーケーションの種類別実施希望

出典:内閣府「第2回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(令和2年)

まだ利用方法を決めていないという方が3分の1以上ですね。

利用方法を決めている人の中で一番多いのは、出張を機にワーケーションをするという方法です。

ワーケーションにはどんなお金がかかる?

ワーケーションでは、デュアルライフに近い下記のような費用が発生します。

  • ワーケーション場所への往復交通費
  • 宿泊費(ホテルや旅館等の宿泊施設、ウィークリー・マンスリーマンション等の賃貸費用)
  • 余暇のための費用(アクティビティ、観光など)
  • 現地での食費や雑費

ワーケーションがこれまでご説明してきた「定住」および「デュアルライフ」と費用面で違うのが、余暇を楽しむ費用がかかることです。

ワーケーションの「助成金」

企業向けに補助金を設けている自治体があります。内容は自治体ごとに異なります。

例えば青森県三戸町の場合、同町にオフィスの設置を検討する企業やリモートワーク体験希望者を対象に、お試し用の作業環境(オフィス)を用意。

利用期間三カ月を上限にし、木造平屋建ての家屋を光熱費込みの無料で貸し出しています。

※詳しくは青森県三戸町のウェブサイトをご確認ください。

まとめ

個人的に以前から興味があった移住ですが、今回改めて調べてみて、いきなり定住するのではなく段階を踏んで試しながら本格的な定住に移行できることが分かりました。

また、支援金も各自治体で充実しており、経済的にも手厚いサポートがありました。

私にとって地方移住はまだ夢のような話ですが、まずは仕事を頑張って、経済的にも自立できるようになったら、お試し移住から少しずつ始めてみようと思います。

この記事が、移住を考えている皆さんの参考になれればと思います。

※本記事は2021年6月現在の情報をもとに作成しています。


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