混合診療が広がるリスク(前編)/風邪の治療で数万円!?

聴診器とお金

混合診療とはなにか

 

知っている人は少ないかもしれませんが、今年の4月から「患者申出療養制度」というものがスタートしています。

この制度が非常に重要視されている理由は、混合診療の実質的な解禁となるものだからです。

 

混合診療とは保険診療と保険外の自由診療を組み合わせて行うことなのですが、今まで日本では原則禁止となっていました。

国はこの規制の撤廃に向けて動きましたが、日本医師会や健康保険組合など多くの団体から猛反発を受けて、患者申出療養という新しい制度を設けることになりました。

しかし、名前を変えただけで本質的には変化していないとの批判もあるようです。

 

[患者申出療養制度]

 

患者が未承認の新薬や医療機器による治療を望んだときに、混合診療を受ける申請ができるようにする制度です。

 

制度上で初めての申請である場合は、患者からの申出を受けた中核病院が国に申請をし、国は専門家の意見を踏まえ、安全性、有効性を原則6週間以内に審査して承認します。

申請の履歴がある申出の場合は、中核病院が原則2週間で判断します。

 

また治療の実施は、基準を満たせば、中核病院と連携する地域の身近な医療機関や診療所などでも可能になります。

※制度の詳細は厚生労働省のWEBサイトをご覧ください

 

ところで、なぜ多くの団体がこの制度に対して反対を表明しているのでしょう?

ピンとこない人も多いと思いますので、混合診療が解禁されるメリットとデメリットを挙げていきたいと思います。

 

混合診療解禁のメリット

まず混合診療が解禁されるメリットについては、おおよそ下記のような図で説明されることが多いでしょう。

混合医療の差

Aは混合診療NGの場合の自己負担額です。

この場合、保険診療で受けた部分も含めて30万円全額が自己負担になってしまいます。

 

Bは混合診療OKの場合の自己負担額です。

この場合は自由診療の分は全額負担ですが、保険診療の部分は3割(年齢などにより異なる)負担の6万円ですみます。

 

支払う金額が少なくなるのは、メリットの一つと言えるでしょう。

 

またこれまで日本では認可がおりなかった治療方法も、患者からの申し出によって行えるように変わりました。難病を患っている場合など、わずかでも治る可能性があるのであれば、認可されていない治療方法であってもチャレンジしたいという患者は多いでしょう。

 

日本で行える治療の選択肢が増えることも、メリットと言えます。

 

毎年の赤字が数千億円にもなる公的保険の財政について、改善につながるとの声もあります。

たとえば最近話題になった抗がん剤『オプジーボ』は非常に高額な薬で、年間で約3,500万円もかかります。日本には高額療養費制度があるため、一般的に患者の自己負担は年間100万円ほどですが、残りの3,400万円ほどは公費で負担することになります。

 

こういった高額な薬品や治療法が公的負担で賄われ続けるとすれば、国民皆保険制度は破綻してしまうでしょう。財政が厳しいと言われていても実はかなりの運用益を出している国民年金とは違って、こちらはリアルに厳しい状況にあります。

 

高額な新しい治療手段が自己負担になれば、財政負担が軽減され国民皆保険制度の維持につながる、という点もメリットかもしれません。

 

メリットまとめ

◎ 保険診療と自由診療を組み合わせて受ける場合でも、全額が自己負担ではなくなる

◎ 日本で認可が降りていない治療方法もOKが出る可能性がある

◎ 破綻が危惧される公的保険の財源にやさしい制度である

 

混合診療解禁のデメリット

一方、大きなデメリットも存在します。

 

たとえば先ほどの『オプジーボ』のような新しい抗がん剤がリリースされても、保険診療の対象にならなければ、お金に余裕のある人しか購入できなくなります。下のリストは承認待ちとなっている抗がん剤の一部ですが、今後これらは混合診療の対象となり、公的保険や高額療養費制度の対象にはなりません。

 

今までのように、1ヶ月9万円ほどで気軽に先端医療を利用できるといった恩恵は受けられなくなるのです。

[国内で未承認の抗がん剤、1ヵ月あたりの費用]

 

・ブリナツモマブ 724.7万円

・プララトレキセート 472万円

・塩化ラジウム 593.4万円

参考:国立がん研究センターWEBサイト

また、国が混合医療の規制を撤廃したい理由の一つに、先ほどあげた公的保険の財源問題の解消があると言われています。公的負担が軽減される点をメリットとしてあげましたが、それがさらに進んで、保険で受けられる医療水準がどんどん下がっていくことも考えられます。

 

そうなると保険診療では本当に最低限の医療しか保障しなくなり、ほんの少しでも保障から外れた医療に関しては、全額が自己負担となってしまいます。

 

将来的には、

・風邪やむし歯の治療に数万円もの請求がされてしまう

・絆創膏や包帯を購入するのに数千円も払わなければいけなくなる

・盲腸の手術に数百万円も費用がかかってしまう

といった世の中になる可能性も否定できません。

 

デメリットまとめ

◎ 効果の高い治療手段を受けたい場合に、多額のお金がかかるようになる

◎ 健康保険の対象範囲が小さくなっていく危険性がある

 

終わりに

問題となっている混合診療について簡単にまとめてみましたが、みなさんはメリットとデメリットのどちらを強く感じられたでしょうか。

この記事が少しでも混合診療の問題を意識するきっかけとなれば幸いです。

 

次回は後編として、混合診療の解禁と保険の関係について記述します。

また自由診療の先進国であるアメリカの現状についても紹介したいと思います。

(あべし)

※本記事は2016年5月25日現在の情報をもとに作成しています。


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