
「将来のためにも、そろそろ保険に入ったほうがいいのかな…」
「掛け捨てはもったいないって聞くけど、貯蓄型は保険料が高いし…」
お金のことを考え始めると、必ずと言っていいほど話題にのぼる「保険」。たくさんの種類があって、仕組みもなんだか複雑。セールスの人に勧められるがままに入ってしまったけれど、本当に自分に合っているのかわからない…と、漠然とした不安や疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
保険は、私たちの人生に寄り添う大切なツールです。でも、その本質を理解しないままでは、かえって家計を圧迫したり、「こんなはずじゃなかった」と後悔したりする原因にもなりかねません。
この記事では、保険を「商品」として損得だけで判断するのではなく、あなたの価値観やライフプランに合った「パートナー」として捉え直すためのヒントをお届けします。
「貯蓄」なのか、「備え」なのか。その答えは一つではありません。この記事を読み終える頃には、あなたにとっての「心地よいバランス」が見つかっているはず。さあ、一緒にあなただけの答えを探す旅に出かけましょう。
「貯蓄型」と「掛け捨て型」の違いを理解しよう
保険を考えるとき、まず最初に押さえておきたいのが「貯蓄型」と「掛け捨て型」という2つの大きなタイプです。この違いを理解することが、自分に合ったプランを見つけるための第一歩になります。
それぞれのメリット・デメリット
言葉のイメージだけで判断するのではなく、それぞれの特徴をフラットに見ていきましょう。
【掛け捨て型保険】
どんなもの?
保険期間中に万が一のことが起きた場合にのみ、保険金が支払われるタイプ。保険期間が満了しても、何もなければお金は戻ってきません。定期保険や医療保険、がん保険などに多く見られます。
例えるなら、万が一の事態からあなたを守ってくれる「お守り」のような存在。その「安心」に対して、毎月一定の料金(保険料)を支払うイメージです。
メリット
- 保険料が安い: 保障内容を同じにした場合、貯蓄型に比べて保険料をぐっと抑えられます。
- 見直しやすい: ライフステージの変化に合わせて、保障内容を柔軟に変更したり、解約したりしやすいのが特徴です。
デメリット
- お金は戻ってこない: いわゆる「掛け捨て」なので、解約返戻金や満期保険金はありません。
- 保障は一定期間: 「10年間」「60歳まで」のように保障期間が決まっているものが多く、更新のたびに保険料が上がることがあります。
【貯蓄型保険】
どんなもの?
万が一の保障を備えながら、同時にお金を積み立てていけるタイプ。満期を迎えたり、一定期間を過ぎてから解約したりすると、満期保険金や解約返戻金が受け取れます。終身保険や養老保険、学資保険などがこれにあたります。
保障という傘を持ちながら、コツコツ貯金箱にお金を入れていくイメージです。
メリット
- お金が戻ってくる: 支払った保険料の一部が積み立てられ、将来的にまとまったお金として受け取れます。
- 保障と貯蓄を兼ねられる: 「保障も欲しいけど、貯金も苦手…」という人にとっては、半ば強制的に貯蓄できる仕組みが魅力です。
デメリット
- 保険料が高い: 保障コストに加えて貯蓄の分も含まれるため、掛け捨て型に比べて保険料は割高になります。
- 早期解約で元本割れの可能性: 契約してすぐ解約すると、支払った保険料の合計額よりも少ない金額しか戻ってこない「元本割れ」のリスクがあります。
- お金が固定される: 途中でまとまったお金が必要になっても、自由には引き出しにくい側面があります。
勘違いしやすい“損得”の考え方
ここで少し視点を変えて、お金との向き合い方という観点から、よくある“損得”の勘違いについて考えてみましょう。
「掛け捨ては、何もなかったら“損”?」
「お金が戻ってこないなんて、もったいない!」と感じるかもしれません。でも、本当にそうでしょうか?
掛け捨て保険であなたが買っているのは、「お金」ではなく「万が一のことがあっても、生活を守れる」という心の平穏です。事故や病気がなく、健康に過ごせたのなら、それは何より幸せなこと。その安心感を得るためのコストと捉えれば、決して“損”ではないはずです。
むしろ、保険料が安い分、浮いたお金を自己投資や趣味、旅行など、「今の自分」を豊かにすることに使えるという見方もできます。これも一つの“豊かさ”ではないでしょうか。
「貯蓄型は、お金が戻ってくるから“お得”?」
「どうせ払うなら、戻ってくるほうがいい」というのは自然な感情です。しかし、少し立ち止まって考えてみましょう。
貯蓄型保険の保険料には、保障のためのコスト(手数料)が含まれています。もし「貯める」ことだけが目的なら、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)といった、より効率的にお金を増やせる可能性のある選択肢もあります。
「お得」かどうかは、戻ってくる金額(返戻率)だけでなく、長期間お金を自由に動かせない機会損失や、インフレ(物価上昇)でお金の価値が目減りするリスクも天秤にかける必要があります。
もちろん、「自分でコツコツ貯めるのは苦手だから、強制的に貯まる仕組みがありがたい」という人にとっては、貯蓄型保険は心強い味方になります。
大切なのは、金額の損得だけで判断しないこと。「自分はどんな安心を、どんな方法で手に入れたいのか」という、あなた自身の心のあり方が、本当の“損得”を決めるのです。
ライフプランに合った保険の選び方
保険は、一度入ったら終わりではありません。あなたの人生のステージが進むにつれて、必要な保障も変わっていきます。今のあなた、そして未来のあなたにとって、本当に必要なものは何でしょうか。
将来に備えるなら?→目的別に考える
まずは「何のために」保険に入るのか、目的をはっきりさせることが大切です。
- 万が一のときの生活を守りたい(死亡保障)
自分が亡くなった後、遺された家族の生活を守るための保障です。「誰に、いくら、いつまで」必要かを具体的に考えます。例えば、小さなお子さんがいるなら、その子が独立するまでの生活費や教育費。配偶者がいるなら、その後の生活資金。これらは、掛け捨ての「定期保険」で、必要な期間だけ手厚く備えるのが合理的かもしれません。 - 病気やケガの治療費に備えたい(医療・がん保険)
入院や手術にかかる費用に備えるための保険です。ここで知っておきたいのが、日本の公的医療保険制度の存在です。私たちはすでに、医療費の自己負担が原則3割に抑えられ、さらに「高額療養費制度」によって、一個人が支払う医療費の上限額が定められています。(※1)
民間の医療保険は、この公的保障でカバーしきれない部分、例えば、個室代(差額ベッド代)や先進医療の技術料、治療中の収入減などを補うためのもの、と位置づけましょう。過度に心配しすぎず、「貯蓄でカバーできる範囲」と「保険で備えたい範囲」を切り分けることが重要です。 - 将来のためにお金を貯めたい(学資保険・個人年金保険など)
子どもの教育資金や、自分の老後資金など、明確な目的のために計画的にお金を準備したい場合に検討します。「保障」よりも「貯蓄」の色合いが濃いタイプです。
ただし前述の通り、今はNISAなど他の金融商品も充実しています。それぞれのメリット・デメリットを比較して、自分の性格や知識レベルに合った方法を選ぶのが賢明です。保険はあくまで選択肢の一つ、と捉えましょう。
家族構成や年齢による違い
目的と合わせて考えたいのが、あなたの今のライフステージです。
- 独身(20代〜30代)
扶養する家族がいない場合、高額な死亡保障の必要性は低いでしょう。優先すべきは、病気やケガで働けなくなったときの自分の生活を守るための医療保険や就業不能保険です。貯蓄も大切ですが、保険料はミニマムに抑え、余ったお金で自己投資や資産形成を始めるのがおすすめです。 - 夫婦のみ・DINKS(30代〜40代)
パートナーの生活を守るため、お互いに一定の死亡保障が必要になるかもしれません。住宅ローンを組んでいる場合は、団信(団体信用生命保険)の内容も確認し、不足分を補う形で考えます。二人で将来どんな暮らしをしたいか、お金の価値観をすり合わせる良い機会にもなりますね。 - 子育てファミリー(30代〜40代)
最も保障の必要性が高い時期です。特に大黒柱の方の死亡保障は、子どもの成長に合わせて「いつまでに、いくら必要か」をしっかりシミュレーションし、手厚く備えましょう。教育資金の準備として、学資保険を検討する方も多いステージです。 - 子育て終了後(50代〜)
子どもが独立すれば、大きな死亡保障は必要なくなります。保障額を減額して保険料をスリム化しましょう。関心は「老後資金」と「介護」「自身の医療」へシフト。老後の生活費を補う個人年金保険や、介護に備える保険などを検討する時期です。
このように、保険は人生の伴走者。その時々の自分にフィットするように、定期的な見直しが不可欠です。
あなたに合ったプランを見極めるチェックポイント
さあ、最後の章です。ここまで学んだことを元に、今のあなたの保険が、あるいはこれから選ぶ保険が、本当に自分に合っているかを見極めるためのチェックポイントを確認しましょう。
毎月の保険料は負担になっていないか?
これは最もシンプルで、最も重要な問いです。
「未来の安心のためだから」と、今の生活を切り詰めてまで高い保険料を支払っていませんか?保険はあくまで、あなたの人生を豊かにするためのツール。そのツールに縛られて「今」を楽しめなくなっては、本末転倒です。
大切なのは、「手取り収入の〇%」といった画一的な基準ではありません。「この金額なら、無理なく、気持ちよく払い続けられるか?」という、あなた自身の感覚です。家計の固定費として、重荷に感じていないか。もう一度、胸に手を当てて考えてみてください。
「備え」と「貯める」のバランスは取れているか?
この記事のテーマに立ち返ってみましょう。あなたの保険ポートフォリオは、「備え」と「貯める」のバランスが、あなたの価値観と合っていますか?
- 「とにかく心配性だから、保障第一!」
→OKです。でも、保険料を払いすぎて、貯蓄や投資に回すお金がなくなっていませんか?最低限の安心は割安な掛け捨て保険で確保し、少しだけ勇気を出して、浮いたお金をNISAなどで「増やす」選択肢を考えてみるのも良いかもしれません。 - 「保険は非効率!貯蓄と投資で全部カバーする!」
→それも一つの考え方です。でも、もしもの時、本当に貯蓄だけで足りるでしょうか?特に、家族を支えているなら、ごく少額の掛け捨て保険で「万が一の大きなリスク」だけヘッジしておくことで、より安心して資産形成に集中できるかもしれません。
理想は、「公的保障」を土台に、「保険(備え)」で大きなリスクに蓋をし、「貯蓄・資産形成(貯める・増やす)」で未来の夢を育てる、という3つの要素を上手に組み合わせること。
保険で全てを解決しようとしない。これが、心地よいお金との関係を築くための秘訣です。
保険は、あなたの人生という物語を守り、支えてくれる大切な脇役です。でも、主役はいつだって、あなた自身。
ぜひこの機会に、あなただけの「ちょうどいい」保険との付き合い方、見つけてみませんか。
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