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さよなら デビッド・ボウイ
「20世紀で最も影響力のあるアーティスト」とミュージシャンたちに言わしめた人がこの世を去った。
1月10日 デビッド・ボウイ死去 享年69
その人は、音楽、映画、演劇、ファッションなど、さまざまな分野で才能を見せつけ、世界中の人々に強烈なインパクトを与え続けてきた。
架空のロックスター、ジギー・スターダスト、『戦場のメリークリスマス』のジャック・セリアズ、あるいは、遺作となった最新アルバム『★(Blackstar)』等々、デビッド・ボウイからイメージするものはそれぞれ異なるだろう。
また、デビッド・ボウイを知らない世代でも、彼の音楽やファッションが、忌野清志郎、布袋寅泰、吉井和哉、GLAYなどのミュージシャンたちに多大なる影響を与えたことを知れば、いかに偉大な存在だったかに気づくことができるだろう。
本日は、追悼版としてデビッド・ボウイと金融とのかかわりを調べながら、彼が残した足跡を辿りたい。
デビッド・ボウイと音楽ビジネス
デビッド・ボウイは、インターネットがそれまでの音楽ビジネスに大きな変化をもたらすことを、20年以上前から感じていたようだ。彼は、インターネットが普及して音楽が水のような電子データになり、著作権が存在しなくなる日が来ると考え、来たるべき日のために用意周到な準備をしていた。1997年におこなった、著作権の証券化による5,500万ドル(約65億円)のボウイ債(Bowie Bonds)の発行がそれである。
・著作権
文化的な創造物(=文芸、学術、美術、音楽などのジャンルに入り、人間の思想、感情を創作的に表現したもの)を保護する権利。 原則的保護期間は、著作者が著作物を創作した時点から著作者の死後50年まで。 全部または一部を譲渡(売買)、貸与することにより、収益を得ることができる。
・証券化
(著作権などの)自ら保有する資産が、将来生みだす現金収支(=キャッシュ・フロー)を裏づけとして有価証券を発行し、金銭を調達する手段。有価証券の小口化により、投資家から広く資金を集めることが可能となる。
・ボウイ債のしくみ
※ここでいう資産とは、1990年以前の著名な25の初期アルバム、300曲に関する将来15年にわたるロイヤルティ収益を指す
なぜ著作権の譲渡や貸与ではなく、証券化という手法を選択したのだろう。
デビッド・ボウイに限らず、アーティストの多くは自分が生み出した作品を手放したくないと考える。しかしその一方で、著作権からの収益を早く手にしたいとも思う。証券化という手法によって、著作権を完全に手放すことなく収益を手にすることを実現するのである。
ボウイ債はどうなった
ボウイ債は、1997年に格付け機関ムーディーズによりA3の格付けを付与されており、当時の米国国債の利率である6.37%を上回る、7.9%の利子を得ることができた。しかし、その後音楽ファイル共有サービスが台頭してCDが売れなくなり、2003年にはムーディーズが格付けをBaa3に下げた。そして、最終償還期限の15年を待たずに、2007年に清算されることとなった。
ボウイ債の価値は消滅したが、ジェームス・ブラウン、ロッド・スチュワートといった大物アーティストたちが、その手法を踏襲していった。彼の音楽が、数多くのミュージシャンたちに影響を与えたのと同様に。
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証券化という資金調達方法は、不動産やローン債権など様々な分野でおこなわれている。自らの商品価値を証券化し、資金を調達し、その資金を使って新たな作品を生み出していく革新的な試みは、デビッド・ボウイというアーティストに実にふさわしいメソッドではないか!
常に変化を求め続け、何をやっても、いくつになっても、とにかくカッコよかった。デビッド・ボウイは、永遠のStarmanになった。どうか安らかに。
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