ヤマハ vs JASRAC どうなる著作権使用料バトル
どうも。押尾センパイです。
音楽教室からの著作権使用料の徴収をめぐって、ヤマハ音楽振興会と日本音楽著作権協会(以下JASRAC)がもめています。
ヤマハ音楽振興会は、「支払い義務はない」としてJASRACを提訴する方針を固めたようですが、JASRACは、来年1月からの徴収を目指しています。
子どものころ、ヤマハ音楽教室に通っていた押尾としては、とても気になるニュースです。
今日は、音楽著作権についてレポートします。
ちなみに、習っていたのはエレクトーンです。
著作権使用料がかかるのはどんなとき?
ヤマハとJASRACの著作権バトルを理解するためには、まず音楽著作権について知らなければなりません。
著作権法の第22条には「著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として上演し、又は演奏する権利を専有する。」とあります。
つまり、著作者(作詞家、作曲家、シンガーソングライターなど)だけが、自分の作った作品を公衆の前で演奏する権利を持つということです。
著作者ではない人がこれをおこなう場合には、著作権使用料が発生します。
ただし、非営利・観客から料金を徴収しない・出演者にギャラが発生しない場合は、著作権使用料の対象外です。
学校の授業で歌うとか、町内会の親睦イベントで演奏をおこなう場合などがこれにあたります。
具体的には、以下のようなケースで著作権使用料が発生します。
ケース1:押尾(自称ミュージシャン)が路上ライブで、中島みゆきの『糸』を歌う場合 ※カンパ用の箱を設置し、有料ライブチケットの販売をおこなっている 路上ライブなので観客料金はかからず、押尾はノーギャラで歌っていますが、カンパの箱を置きチケット販売をしているので、非営利ではありません。そのため著作権使用料が発生します。著作権使用料を支払うのは主催者、つまり押尾です。 |
ケース2:押尾(駆け出しミュージシャン)がライブハウスで、中島みゆきの『糸』を歌う場合 ※チケット代:2,000円 この場合は著作権使用料が発生します。ただし、支払うのは押尾ではなく、主催者であるライブハウスです。 |
ケース3:押尾がカラオケで、中島みゆきの『糸』を歌う場合 カラオケボックスで曲を使用する際にも著作権使用料が発生します。カラオケボックスを運営する会社が、部屋の収容人数ごとに著作権使用料を支払っています。 |
ケース4:押尾(メジャーアーティスト)が、日本武道館で、中島みゆきの『糸』を歌う場合 ※チケット代(平均):6,000円 ケース2と同様に著作権使用料が発生します。支払うのはコンサートの主催者、たとえば、ディスクガレージとかTOKYO FMとかですね。 また、押尾が自分の曲の著作権をJASRACに預けている場合は、これらの曲にも著作権使用料が発生します。著作権使用料は、1曲ごとに支払う場合と1公演ごとに支払う場合があります。通常は、どちらか安いほうの使用料となります。 |
ケース5:押尾(メジャーアーティスト)が路上ゲリラライブで、自分が作った曲を歌う場合 ※主催者は押尾、著作権はJASRACが管理、メジャーアーティストではあるが、あえてカンパの箱を置く この場合、押尾は自分の持ち歌を歌うのに、JASRACに著作権使用料を支払うことになります。ただし、カンパの箱を置かないのであれば、非営利となり著作権使用料は発生しません。 |
著作権管理とJASRAC
JASRACは著作権管理団体のひとつで、著作権使用料の徴収や分配、著作権侵害の監視などをおこなっています。
著作者である作詞家、作曲家、音楽出版社(作詞家や作曲家が持っている著作権を譲り受け、印税の管理、原盤制作、プロモーションなどをおこなう会社)のほとんどが、JASRACと信託契約を結んで著作権を預けており、市場シェアは98%といわれています。
作詞家・作曲家個人や音楽出版社が著作権使用の許可や著作権使用料の徴収をおこなうこともできますが、膨大な手間と時間がかかるため、JASRACに著作権を預けています。
2016年度のJASRACの使用料徴収額は、約1,118億円でした。
JASRACは、用途に応じて定められた著作権使用料から手数料を受け取り、残りを著作者に分配します。
手数料率は以下のとおりです。
用途 | JASRACの手数料率 |
コンサート | 著作権使用料の26% |
カラオケボックス | 著作権使用料の26% |
CD、テープなど | 著作権使用料の6% |
映像ソフト(ビデオ、DVD) | 著作権使用料の10% |
出版物(楽譜、歌集) | 著作権使用料の20% |
インターネット | 著作権使用料の11% |
ヤマハ vs JASRAC 何が問題なのか
ヤマハとJASRACがもめているのは、演奏権をめぐる解釈です。
JASRACは、音楽教室での演奏も「公衆に直接聞かせることを目的としている」との見解を示しています。
音楽教室と類似するカルチャーセンターやオープンカレッジなどから著作権使用料を徴収していることを前例として、音楽教室からも著作権使用料を徴収する方針です。
いっぽうヤマハなどの音楽教室は「指導や技能習得が目的であり、聞かせることを目的としていない。演奏権は及ばない」「音楽教室の先生の演奏は教育である」と反論しています。
音楽教室からの著作権使用料徴収は誰得なのか
音楽教室から著作権使用料が徴収されると、レッスン料、つまり家計にしわ寄せがいくことが考えられます。
レッスン料の値上げは、生徒数の減少を引き起こすおそれがあり、一部の人だけしか音楽を楽しむことができなくなります。
ヤマハは、著作権使用料の徴収は「音楽文化の発展を阻害する」と主張しています。
また、作詞家、作曲家などの著作者の中には、今回の著作権使用料の徴収に反対している人も少なくありません。
宇多田ヒカルさん、くるりのボーカル岸田繁さん、『残酷な天使のテーゼ』などの作品で知られる作詞家の及川眠子さんなどもSNSで批判的なコメントをしました。
これに対するJASRACの反論は、CDが売れないいまの時代に、著作権使用料を徴収しなければ作詞家・作曲家・ミュージシャンになる人がいなくなり、音楽文化が衰退するというものです。
両者の主張には、どちらももっともな部分があり、対立は深まるばかりです。
JACRACはここ数年にわたり、さまざまな商業施設での著作権管理をはじめています。
1971年 社交ダンス教室
2011年 フィットネスクラブ
2012年 カルチャーセンターでの楽器教室
2015年 社交ダンス以外のダンス教室
2016年 歌謡教室(カラオケ教室、ボーカルスクール)
2017年 パチンコ店
著作権使用料は、音楽教室の年間受講料収入の2.5%を予定しているそうで、10億円~20億円の収入が見込まれるとのこと。
いちばん得するのはいったい誰なんでしょう。
記事中にたびたび出てくる中島みゆきの『糸』は、昨年度の著作権分配額がもっとも多かった作品で、2017年JASRAC賞 金賞を受賞しています。
著作権については、音楽出版社のヤマハミュージックエンタテインメントホールディングスが、一部をJASRACに信託しています。
そこに因縁の糸を感じるのは、押尾だけでしょうか。
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