その学資保険ちょっと待った

学資保険について考えるイメージ

4月から学資保険料アップ

こんにちは。Money Motto!編集長のみやこです。

こちらの記事でも紹介したとおり、来月から学資保険、終身保険、個人年金保険などの貯蓄型保険(毎月支払型)の保険料が値上がりします。今後ますます、安全な方法でお金を増やすことが難しくなります。特に、小さなお子さんのいる家庭や、これからお子さんが生まれる家庭では、どうやって教育費を貯めるか、非常に悩ましいところではないでしょうか。

かつて、教育資金を貯める定番商品として人気のあった学資保険ですが、返戻率の低下とともに加入メリットが薄れてきています。最近では、学資保険で教育資金を貯めるべきではないという意見も目にします。本日は、学資保険を取り巻く環境と教育費を貯める方法について考えます。

大学の学費はどれくらいかかる?

30代~50代の子どもがいる世帯にとって、家計の支出割合が高くなるのが教育費です。その中でも、大学進学にかかる費用はとりわけ大きな負担となりがちです。

4年制大学への進学率は、平成21年度にはじめて50%を超えました。平成28年度学校基本調査によると、大学(学部)進学率(過年度卒含む)は52.0%で、過去最高となっています。また、短大、専門学校等を加えた高等教育機関進学率(過年度卒含む)は80.0%で、こちらも過去最高の数字です。高校卒業後、大多数の生徒は上級学校に進学すると考えてよいでしょう。

年度 大学進学率
昭和54(1979)年度 26.1%
平成元(1989)年度 24.7%
平成11(1999)年度 38.2%
平成21(2009)年度 50.2%
平成26(2014)年度 51.5%
平成27(2015)年度 51.5%
平成28(2016)年度 52.0%

4年制大学に進学すると、どれくらいの学費がかかるのでしょうか。

  国立大学 公立大学(平均) 私立大学(平均)
入学金 282,000円 397,721円 261,089円
授業料 535,800円 537,857円 864,384円
合計(4年間) 2,425,200円 2,549,149円 3,718,625円

公立大学入学料は地域外からの入学者の平均
出典:文部科学省 国公私立大学の授業料等の推移(平成26年)

平成26年のデータでは、国公立大学で約250万円、私立大学で約370万円の学費が必要です。さらに、自宅外通学の場合は生活費もかかります。

国立大学の学費は、平成17年以降現在まで据え置きとなっていますが、長期的にみると値上がりしています。いっぽう私立大学の学費は、年々上昇しています。また、2018年から18歳人口が減少に転じることから、学生数の減少を乗り切るために授業料等の値上げをおこなう大学が増えると考えられます。今後も学費の上昇は避けられないでしょう。

毎年学費が1%ずつ上昇すると仮定すると、今から18年後にかかる学費は、国公立大学で約300万円、私立大学では約460万円となります。大学在学者の70%以上が私立大学生であることを考えると、500万円は準備しておきたいところです。

児童手当を貯蓄しよう!

この500万円の学費、どうやって貯めるのがよいのでしょう。学資保険や積立などを検討する前に、まずは公的制度に目を向けましょう。

児童手当
子どもが生まれると、父母などの養育者には、国から児童手当が支給されます(要申請)。支給総額は、子ども一人につき198万円、所得制限がある場合は90万円です(子どもの数や誕生月によって金額が変わります)。

支給対象年齢  支給額(月) 所得制限世帯
0歳~3歳未満 15,000円 5,000円
3歳~小学校修了前 10,000円
(第1子・第2子)
15,000円
(第3子以降)
5,000円
中学生 10,000円 5,000円

18歳に達する日以後、最初の3月31日までの間にある児童のうち、年長者から第1子、第2子と数えます(19歳以上の子どもは含まれません)

申請先:市区町村(公務員は市区町村と勤務先)
申請期間:出生や転入から15日以内(原則、申請した月の翌月分からの支給
支給時期:原則として、毎年6月、10月、2月に、それぞれの前月分までの手当を支給

※出生日や転入日(異動日)が月末に近い場合は、申請日が翌月になっても異動日の翌日から15日以内であれば、申請月分から支給されます

 扶養親族等の数 所得額 収入額
0人 622万円 833.3万円
1人 660万円 875.6万円
2人 698万円 917.8万円
3人 736万円 960万円
4人 774万円 1002.1万円
5人 812万円 1042.1万円

共働きの場合は、収入が多い方が所得制限の対象となります

(支給例1 所得制限対象外)
子ども:19歳、16歳、14歳、10歳の場合
支給対象:14歳、10歳
支給金額:14歳(第2子)10,000円/月、10歳(第3子)15,000円/月

(支給例2 所得制限対象外)
子ども:14歳、10歳の場合
支給対象:14歳、10歳
支給金額:14歳(第1子)10,000円/月、10歳(第2子)10,000円/月

児童手当を全額貯蓄すると、約200万円(所得制限対象外の場合)となり、500万円の約40%をまかなうことができます。特に、支出の少ない就学前は、教育費を貯めるのに最適の時期です。児童手当には手をつけず、しっかり貯めることを心がけましょう。

児童手当を受けるためには、毎年6月に現況届の提出が必要です。提出を忘れると、給付が受けられなくなるので注意しましょう。

学資保険を取り巻く環境

東京大学社会科学研究所がおこなった「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査2016」によると、子どもがいる家庭のうち、子ども保険(学資保険)に加入している割合は57.9%でした。「教育資金=学資保険」というイメージが浸透していることがわかるデータですが、学資保険を取り巻く環境は、年々厳しくなっています。

返戻率の低下
4月からの保険料値上げによって、返戻率が大幅に低下します。下表をみると、返戻率が高い商品でも、110.3%にとどまっています。また、学資保険の予定利率は満期まで固定されるため、将来的にも大きく増えることはありません。「学資保険でお金を増やせる」は、もはや過去の話です。

 保険会社 保険料払込終了年齢 返戻率
A社 15歳 104.1%
B社 18歳 104.0%
C社 18歳 110.3%

父親30歳、子ども0歳で、2017年4月以降に契約する場合

学資保険で学費300万円を貯めるには(例 上記A社)
満期までの受取金額:300万円
月払保険料:15,995円(30歳男性の場合)
払込期間:15年
払込保険料累計:2,879,100円
返戻率:104.1%
※途中解約すると元本割れが発生

販売の縮小
マイナス金利導入以降、学資保険の販売が縮小しています。現在、ほとんどの商品が直販(保険会社の営業からの申込)のみとなっており、保険代理店やインターネットでの学資保険の取扱は、ほぼありません。そのため、保険ショップなどで学資保険の相談をしても、学資保険以外の商品を提案されるケースが増えています。つまり、学資保険は保険会社が積極的に売りたい商品ではないということです。

学資保険だけじゃない!学費を貯める方法

では、学資保険に代わる商品にはどのようなものがあるのでしょう。

低解約返戻金型終身保険
近年、学資保険の代替として加入するケースが増えているのが、低解約返戻金型終身保険です。子どもが18歳を迎える前に払込を終え、解約返戻金を学費に充てます。保険料の払込終了前に解約すると大きく元本割れするいっぽう、払込終了以降はいつでも解約ができ、経過年数が長くなるほど返戻率がアップします。終身保険であるため、子どもの有無や子どもの年齢にかかわらず加入することができます。教育費としてだけでなく、老後資金や万一の保障としても使うことができるため、学資保険よりも用途の幅が広い商品です。

低解約返戻金型終身保険で学費300万円を貯めるには(例)
保険金額:500万円
月払保険料:17,520円(30歳男性の場合)
払込期間:15年
払込保険料累計:3,153,600円
解約返戻金:3,302,350円
返戻率:104.7%
※払込期間終了前に解約すると元本割れが発生

自動積立定期預金
毎月決まった日に、決まった金額(ボーナス時の増額も可能)を普通預金から定期預金に積み立てる商品で、銀行、郵便局などの金融機関で取り扱っています。給与天引きと同じような感覚で積立ができるので、確実にお金を貯めることができます。超低金利の現在、利息はほとんど期待できませんが、インフレ時には適用金利が引き上げられます。

財形貯蓄制度(一般財形貯蓄)
毎給与・ボーナスから天引きで貯蓄をおこなう制度で、財形制度のある企業の従業員(勤労者)であれば誰でも利用できます。原則3年以上の間、定期的に積立をおこない、貯蓄開始から1年経過後は、自由に払い出しができます。勤務先によっては、財形給付金制度(勤務先が年間10万円を上限に毎年拠出をおこない、7年ごとにその拠出金の元利合計額を給付金として支払う)というおトクな制度がある場合があります。

個人向け国債
国が個人向けに発行する債券で、10年変動金利、5年固定金利、3年固定金利の3種類があります。半年ごとに年2回利子を受け取ることができ、元本や利子(下限は0.05%)の支払は、国が責任を持っておこないます。最低1万円から1万円単位で購入ができ、購入額に限度はありません。毎月発行されるため、定期的に購入ができます。もっともインフレに対応できるのは、10年変動金利です。

上記は、元本割れリスクが比較的低く、安全にお金を貯められる商品です。教育費は、決まった時期に確実に準備しなければならない資金なので、株式・投資信託・外貨建商品のようなリスクの高い商品の選択は避けたいところです。それぞれの商品に特徴があり、絶対にこれが有利というものはありませんが、さまざまな選択肢があることを踏まえたうえで、学費を貯める方法を検討してみてはいかがでしょうか。

※本記事は、個人向け国債の購入について、勧誘や推奨を目的とするものではありません。


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