国民年金はもう頼れない!老後のために私たちができること

老後もイキイキ働く男性

前回の記事では、平成27年末に成立した年金改正法案は始まりにすぎず、今後も年金制度の変更は続いていくだろうと述べました。

では、これから老後を迎える現役世代の私たちは、どのような備えをしていけばよいのでしょうか。

今回も、年金問題に詳しい社会保険労務士の北村庄吾さん(株式会社ブレインコンサルティングオフィス)に伺いました。

老後の準備で、最も大切なこと

老後のためにどのような準備をすれば良いかを尋ねたところ、返ってきた答えはズバリ、『健康』と『スキル』でした。

「よく食べ、よく寝て、運動し、65歳を過ぎても働き続けられる体力を維持すること。その上で、自分のスキルアップに努めること」。期待と違う回答かもしれませんが、これが北村さんの考える最も大切なことでした。

実際に北村さんの周りでも、退職後にスキルを活かして働いている人はたくさんいて、みんなイキイキと仕事しているそうです。

「現在、社会的にも『働き方改革』が起きており、自分の時間を切り売りする時代ではなくなっています。ただ長く働くのではなく、会社を辞めても食べていける自分の能力を磨くこと、いわゆるキャリアデザインの重要性が増しています。65歳を過ぎても働くことができて、充分な収入があれば、年金がいくらもらえるかなどあまり気にならなくなる」とのことでした。

確かに、自分自身の商品価値を上げることが、一番の老後準備と言えるかもしれません。

いきいき働く老人たち65歳を過ぎてもイキイキ働いていければ、年金への不安も少ないですね

老後の資産形成はまず節税メリットで

働き続けることが大事という話でしたが、とはいえ、老後の資産形成について何もしなくてよいわけではありません。それはそれで、若いうちからしっかりと準備しておく必要があります。

資産形成については、自分なりに情報収集して勉強できる人であれば、株でも不動産でも好きな方法で備えるのがベストだと思います。ただ多くの人にとっては、「節税メリットを得ながら資金準備するのが安全で手軽な方法」なのかもしれません。

「まず、収入があれば誰でもカンタンに、お手軽に始められるのが『個人年金保険』です」と北村さん。個人年金保険は生命保険料控除という制度を利用できるため、所得税が最大40,000円、住民税が最大28,000円控除されます。例えば課税所得330万円までの人が月々7,000円の保険料を払い込んだ場合、毎年おおよそ8%の利息を得るのと同様の効果を得ることができます。

<課税所得195万円超~330万円以下の場合>

保険料:月額7,000円(年額84,000円)
控除額:6,800円
所得税:40,000円×10%=4,000円
住民税:28,000円×10%=2,800円
*年間84,000円の保険料で6,800円の控除額、年利8%の節税メリット

ただし個人年金保険には、控除の限度額が少ないという弱点があります。年額80,000円以上の保険料にしても控除額は増えないので、加入するのは最低限の金額(年額80,000円程度)で充分だと思います。

さらに大きな節税メリットを得たいという人は、最近あちらこちらで話題になっていますが、やはり『確定拠出年金(iDeCo)』がオススメです。

税法上3回おいしい、確定拠出年金(iDeCo)

確定拠出年金(iDeCo)は、北村さんも「これをやらない手はない!」とイチオシする制度です。「税法上3回おいしい制度」であり、拠出するとき、運用で利益が出たとき、60歳になって受け取るとき、それぞれのタイミングで節税効果を得られます。

1.掛け金の所得控除

個人年金保険よりも、ずっと多額の所得控除を受けられます。なんと掛け金の全額です。仮に年収500万円の人が毎月23,000円(年間27.6万円)を拠出した場合、50,000円ほどの節税になります。口座管理費を差し引いても、年利15~16%ほどの節税メリットです。

2.運用益が非課税

通常では運用で得た利益額に対して20.315%の課税がされてしまいますが、確定拠出年金(iDeCo)の場合はすべて非課税となります。しっかり運用益を得ている人にとっては、かなりのメリットです。

<月額1万円の掛け金を、25年間運用した場合>

・平均年率4%で運用
 元金300万円 → 元利合計508.8万円
・平均年率8%で運用
 元金300万円 → 元利合計909.0万円

3.受取時の控除

確定拠出年金(iDeCo)は原則60歳で受け取ることができ、一時金で受け取る場合には退職所得控除が、月々受け取る場合には公的年金等控除が使えます。
一時金受け取りの控除額は、以下になります。

・拠出年数が20年以下の場合
 40万円×拠出年数
・拠出年数が20年以上の場合
 800万+70万円×(拠出年数-20年)

拠出年数を25年とすると、控除金額は1,150万円になる計算です。1,150万円を超える部分についても、課税されるのは1/2の金額です。拠出できるのは60歳までですから、できるだけ控除額を大きくしたい人は、始めるのは早ければ早いほど良いでしょう。

ところで、確定拠出年金(iDeCo)の告知が最近やたらと多いことについて、北村さんは「公的年金だけではハッピーリタイアはムリだよ、という政府からのメッセージ」だと考えているようです。また「普及させることで、日経平均を上げようとする株価対策の側面もあるかもしれない」とも。政府がそういった狙いで仕組みを作っているのであれば、こちらとしてもそれに逆らわず、うまく利用していくのが良いのではないでしょうか。

おわりに

“60歳までマジメに働いて、その後は年金でのんびり隠居生活をする” というような時代は、すでに終わっていると言えるでしょう。今回のインタビューにもありましたように、現役世代の私たちができる老後への準備としては、まず今のうちから制度などを利用してしっかりと資産形成を行うこと。それから生涯にわたって稼いでいける『スキル』と『健康』への自己投資に努めること、だと言えるでしょう。
(終わり)

 

北村氏

【プロフィール】
北村 庄吾(きたむら しょうご)
1961年生まれ 熊本県出身 中央大学卒業
社会保険労務士・行政書士・ファイナンシャルプランナー
株式会社ブレインコンサルティングオフィス代表取締役

年金問題など社会保険制度の評論家として活躍中。
趣味は、50歳からはじめたロードバイク。「ヒルクライムの達成感がたまらない!」とのこと。

 


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